認知症とは?やさしくわかる基礎知識 ― 症状・種類・予防と最新データ(2024年)
「認知症」という言葉はニュースなどでもよく取り上げられるようになりましたので、ご存じの方は多いのではないでしょうか。
でも、「認知症」がどんなものなのかをご存じの方は意外と少ないかもしれません。
いわゆる認知症のイメージとして、
●何もわからなくなってしまう
●認知症になってしまったらもうおしまい
●コミュニケーションがとれなくなってしまう
というイメージを持っている人が多いかもしれません。
少し前までは、「認知症」は「痴呆症」と呼ばれていました。
「痴呆」という漢字には侮蔑的な意味合いが含まれている、ということで2004年に行政用語として変更が決定(厚生労働省)されたという経緯がありました。
「痴呆」という侮蔑的な言葉のために、隠してしまったりすることで早期発見の妨げになっているのではないか、という提案から用語の変更につながりました。
しかし、いま「認知症」という言葉であったとしてもネガティブなイメージが強いと言わざるを得ないのではないでしょうか?
そのネガティブイメージのために、「認知症」というものを遠ざけてしまったり、忌避してしまうことで、より一層「認知症」に対するイメージが悪くなるばかりか、「認知症」となって一番不安を抱えているご本人がなおさら追い込まれてしまうという環境に拍車をかけてしまう状況になってしまう。
認知症は、誰もが必ず通る道というわけではありません。一方で、後段で紹介する厚生労働省の将来推計が示すように、年齢が上がるほど有病率は高くなり、自分や家族にとっても他人事とは言い切れない身近なテーマです。
「認知症」ってこういう状態なんだ
とまずは知っていただくことが大切なのではないかと思い、この記事を書かせていただきました。
できるだけわかりやすくお伝えするために、要点を絞って解説をさせていただいておりますので、最後までお読みいただければ幸いです。
目 次
1)認知症ってどんな状態? | まずは基礎知識を知ろう
2)認知症の方はどのくらいいるの? | 意外と身近かもしれません
3)認知症になったら治療することはできるの? | 原因疾患や病期で異なります
4)認知症の予防・リスク低減は? | 早期発見とは分けて考えよう
5)まとめ
+α)参考情報(おすすめの書籍や参考サイトなど)
1)認知症ってどんな状態? | まずは基礎知識を知ろう
1-1)認知症はひとつの原因疾患名ではありません
国立長寿医療研究センターは、認知症を「脳の機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態」を指す言葉として説明しています。認知症の背景には、アルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病などさまざまな原因疾患があり、原因や症状、必要な対応は一人ひとり異なります。
出典:国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A」
そのため、「認知症」というひとくくりだけで《その人》を見てしまうと大切なものを見落としてしまう恐れがあるということを強く伝えたいのです。
1-2)認知症の症状
認知症では、記憶や見当識、理解・判断、実行機能などの認知機能の障害に加えて、不安、焦燥、幻覚、妄想、興奮・攻撃的な言動などの行動・心理症状(BPSD)がみられることがあります。

BPSDは認知症そのものだけで単純に決まるものではありません。国立長寿医療研究センターは、原因疾患や身体の状況、使用中の薬剤、生活環境、周囲の人の対応、病前の性格や人間関係などが出現に影響すると説明しています。まず「なぜその言動が起きているのか」を一つの原因に決めつけず、本人の不安や身体状態、環境などを確認することが大切です。
出典:国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A」
たとえば、興奮や攻撃的な言動がみられた場合も、「性格だから」「認知症だから」と決めつけるのではなく、痛みや体調、薬剤、不安、環境の変化、周囲の関わり方など複数の要因を確認します。BPSDへの対応では、誘因や環境要因を探り、非薬物的な対応を優先することが基本とされています。
参考:国立長寿医療研究センター「認知症の精神行動症状の薬物治療に関する基本的な対応」
<認知機能の障害の例>
□記憶障害
物事を覚えにくくなったり、思い出しにくくなったりする
□見当識障害
時間や場所、人との関係が分かりにくくなる
□理解・判断力の障害
考えるスピードが遅くなったり、状況判断が難しくなったりする
□実行機能障害
計画や段取りをたてて行動することが難しくなる
<行動・心理症状(BPSD)の例>
●心理症状
□抑うつ
気分が落ち込み、無気力になる
□不安・焦燥
落ち着かなくなったり、強い不安を感じたりする
□幻覚
実際にはないものが見えたり、聞こえたりすることがある
□妄想
物を盗まれたなど事実と異なることを確信することがある
●行動症状
□歩き回る行動
目的や理由があって歩き続け、帰り道が分からなくなることなどがある
□興奮・攻撃的な言動
不安、身体状態、環境、薬剤、周囲の対応など複数の要因が影響することがある
□排泄・入浴などをめぐる行動
排泄や入浴をめぐり、本人と周囲の意向が合わないことなどがある
1-3)認知症の種類
認知症には、「4大認知症」と言われる種類があります。
出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」
※ 上記の割合は、同資料が引用する2013年(平成25年)報告の研究「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」に基づく数値です。
●アルツハイマー型認知症(68%)
【原因】脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、
脳に萎縮がおこります。
【症状】昔のことはよく覚えていますが、最近のことは忘れてしまいます。
軽度の物忘れから徐々に進行し、
やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。
●脳血管性認知症(20%)
【原因】脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって、認知機能の低下が生じるものです。
高血圧や糖尿病などは脳血管障害や認知症に関わる危険因子として知られています。
【症状】障害を受けた部位や経過によって症状の現れ方は異なります。
●レビー小体型認知症(4%)
【原因】脳内にレビー小体という特殊なたんぱく質が蓄積することと関連する病気です。
【症状】現実にはないものが見える幻視や、
手足が震えたり筋肉が固くなったりするといった症状が現れることがあります。
歩幅が小刻みになり、転びやすくなる場合もあります。
●前頭側頭型認知症(1%)
【原因】脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経細胞が障害され、萎縮がみられる病気です。
【症状】行動や性格の変化、言語機能の障害などがみられることがあります。
●その他(8%)
上記からもお分かりいただけるように、割合としては7割近くが「アルツハイマー型認知症」と言われており、二番目の「脳血管性認知症」を合わせると9割近くになります。
それぞれの認知症の”型”によって特徴がありますが、あくまでも目安としてご覧いただくようにしていただき、
《その方の感情》と《症状》に向き合っていただくことがよい人間関係を維持していくコツになるのと言われています。
なお、認知症の原因は複数のものが重なることもありますので、病名は一つの手がかりではありますが、それだけとは限らない複合型もあるということも一応知っておいていただければ幸いです。
2)認知症の方はどのくらいいるの? | 意外と身近かもしれません

※グラフは2015年時点の旧推計
最新の推計では、2022年は約443万人(高齢者の12.3%)、2025年は約471万人(12.9%)、2040年は約584万人(14.9%)と見込まれています。軽度認知障害(MCI)の高齢者数も、2022年は約559万人(15.5%)、2040年は約613万人(15.6%)と推計されています。2040年には、認知症14.9%とMCI15.6%を合わせて高齢者のおよそ3割という水準です。
数字をご覧いただければ感じていただけるように、決して珍しい病気ではなく、むしろ身近な存在です。年齢が上がるほど有病率は高くなり、誰にとっても他人事ではないテーマ、ととらえていただいてよいのではないでしょうか。
出典:厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」(同資料は「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」=令和5年度老人保健事業推進費等補助金・九州大学 二宮利治教授 より厚生労働省が作成。厚生労働省「主な認知症施策について」の「将来推計(認知症の人の数)」から公開されています)
3)認知症になったら治療することはできるの? | 原因疾患や病期で異なります
認知症の治療は、原因となる疾患や病期によって異なります。国立長寿医療研究センターは、薬物療法と非薬物療法を適切なケアと組み合わせることが重要としています。
出典:国立長寿医療研究センター「認知症の診断・治療」
アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)または軽度の認知症については、レカネマブやドナネマブなどの抗アミロイドβ抗体薬が承認され、一定の要件を満たす方に対して認知機能や日常生活機能の低下の進行を遅らせる治療が行われています。ただし、すべての認知症やすべての病期に使える薬ではなく、認知機能低下を完全に止めたり元に戻したりする治療ではありません。
出典:厚生労働省「アルツハイマー病の新しい治療薬について」
また、BPSDについては、本人の身体状況や不安、環境、薬剤など背景を確認し、非薬物的な対応を含めて検討することが基本です。「安心させれば認知症そのものの進行を遅らせられる」と単純化するのではなく、本人のQOLと生活のしやすさを支える視点が大切です。
4)認知症の予防・リスク低減は? | 早期発見とは分けて考えよう
認知症の「予防」は、絶対に発症しない方法があるという意味ではありません。国立長寿医療研究センターでは、生活習慣病の管理、運動、栄養、認知トレーニングなどを組み合わせ、認知機能低下を抑制できるかを検証する多因子介入研究が進められています。
出典:国立長寿医療研究センター「予防科学研究部」
一方、早期発見・早期診断・早期対応は「予防」と同じ意味ではありません。認知症基本法も、科学的知見に基づく予防への取組と、早期発見・早期診断・早期対応を分けて規定しています。気になる変化がある場合には、早めに医療機関や地域包括支援センターなどにつながることで、原因の確認や必要な治療・支援を検討しやすくなります。
出典:厚生労働省「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」第21条
日々の健康を保ち、認知機能低下のリスクを減らすことを考えるうえでは、生活習慣病の管理、運動や食事、人とのつながりや知的活動などを一つだけに偏らず組み合わせて考えることが大切です。どれか一つを行えば認知症を防げる、というものではありません。
1.生活習慣(食生活や運動)
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、認知症の発症に関わる危険因子の一部として研究されています。特に脳卒中などの脳血管障害は脳血管性認知症につながり得るため、持病の管理や運動・食事を含む日々の健康管理は大切です。
運動の機会が減りがちな現代では、《歩く》機会が大幅に減ってしまった方もいらっしゃるかと思います。
《歩く》という運動も意外と侮れない、むしろとても大切な運動の機会にもなるのです。
こちらの表は《歩く》ことによって予防・改善できる可能性がある病気等の表です。
出典:健康長寿ネット
オレンジ色の文字は認知症を含む高齢者の方に多い病気、
緑色の文字は年齢に関係なく起こり得る病気となっております。
2.生きがいを見つける
高齢者の方が元氣に過ごすためには、「きょういく」と「きょうよう」が大切と言われています。
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きょういく:今日行くところがある
きょうよう:今日用事がある
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初めてこの表現を聞いたときにはウマイことを仰るなぁと思いました。
何か予定や楽しみがあることは、生活にメリハリをつくり、人とのつながりや外出のきっかけにもなります。これだけで認知症を予防できるという意味ではありませんが、日々を自分らしく過ごすための大切な要素の一つではないでしょうか。
こちらのコラムでも書かせていただきましたが、
生きがいとは「自分がしたいことと義務が一致すること」と定義をさせていただきました。
《自分がしたいこと》
それを見つけるために、「やりたいことリスト」というものを作ってみるということもよいのではないかと思っております。
そして、それを親だけでなく親子で一緒に作ったり、リストを見て「これ一緒にやろう!」なんていうコミュニケーションが生まれると親孝行の時間にもなったりもするのではないか、とも思ったりもいたします。
3.コミュニケーションをとる
最後のコミュニケーションは、他の方とお話をされたりすることです。
「話をする」ことは、人とのつながりを保ち、日々の楽しみや外出・活動のきっかけにもなります。「会話が最も脳を活性化する」といった単一の効果へ決めつけるのではなく、孤立せず人と関わる機会の一つとして大切にしていただければと思います。
ひとり暮らしをしていますと気が付いたら1日一言も誰とも話していない、なんてことがあったりもします。
無理のない範囲で、少しでも人と話したり、地域の活動に参加したり、自分に合った形で人とつながる機会をつくることも選択肢の一つです。
5)まとめ
いかがでしたでしょうか?
認知症と一口に言っても縁遠いものでもなんでもなく、むしろ生活に身近なものであると感じていただけたのではないでしょうか?
ならば、認知症になったときにも生活しやすい環境をいまから作っていくことができたら、その時が来た時にも生きやすくなるのではないでしょうか?
さいごにひとつだけお伝えして締めくくりとさせていただきます。
「認知症」はその人の《全部》ではなく、
あくまでも《一部》に過ぎません。
しかし、「病名」がついた時点で、無意識にいわばレッテルを貼ってしまうことがあります。
《病名》が先、ではなく《その人自身》が先。
そのように接していただけることが「生きやすい社会創り」につながっていくのではないでしょうか?
社会の動き ― 認知症基本法
共生社会の実現を推進するための認知症基本法が2024年1月に施行され、本人の意思の尊重と共生社会の実現が国の方針として定められました。
国全体としても、「認知症とともに生きる」社会づくりへと動き出しています。
出典:厚生労働省「主な認知症施策について」
このコラムが少しでもお役に立てたならば嬉しい限りです。
<参考情報>
認知症
(厚生労働省)
認知症施策の総合的な推進について
(厚生労働省)
<認知症関連のおすすめ書籍・活動>
□当事者の声(ご本人)
1)『ボクはやっと認知症のことが分かった』 著:故・長谷川 和夫
【ひとことコメント】
認知症の専門医であった故・長谷川和夫氏(2021年逝去)が、ご自身が認知症となった体験を綴った書籍
認知症検査としてよく利用される「長谷川式認知症スケール」の生みの親の一人でもあった長谷川氏が、本人として当事者となった体験を伝える一冊です。
2)『丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-』 著:丹野智文
【ひとことコメント】
自動車のトップセールスマンであった丹野氏がある日突然若年性アルツハイマー型認知症と診断されたのは39歳の時。
その当時の体調の変化の様子やその後診断に至った経緯、職場での対応などリアルな声を聞くことができる書籍
3)[『私は誰になっていくの?~アルツハイマー病者から見た世界~』
著:クリスティーン・ボーデン](http://amzn.to/3obPsOa)
[『私は私になっていく ~認知症とダンスを~』
著:クリスティーン・ブライデン](http://amzn.to/3rV5oGU)
【ひとことコメント】
オーストラリア政府で科学技術分野の上級職を務め、首相への助言にも携わっていたクリスティーン・ブライデン氏は、46歳で若年性認知症と診断され、その後、認知症の本人発信の先駆者として世界各地で活動してきました。
参考:ABC「Forget Me Not | Christine Bryden」
□当事者の声(ご家族)
[1)『母が若年性アルツハイマーになりました。
〜まんがで読む 家族のこころと介護の記録〜』 著:Nicco](http://amzn.to/3n6qoH2)
【ひとことコメント】
50代で若年性アルツハイマー型認知症を発症された母親を父親とともに介護をしていく中での心の葛藤をまんが形式でわかりやすく伝えている書籍
2)『認知症の人がその人らしく生きる介護術』 著:速水 ユウ
【ひとことコメント】
医療・介護のプロであっても、家族の介護となるとアタマでわかっていてもココロがついていかない。
そんな体験を小説形式でわかりやすく伝えている書籍
□生きやすい社会創り
1)『注文を間違える料理店』 著:小国 史朗
【ひとことコメント】
認知症を抱えているけれども、まちがえちゃうこともあるけれども何もできないわけじゃない。
まちがえることを受け入れて、まちがえることを一緒に楽しんでしまえるレストランというコンセプトでチャレンジをされた経緯を描いた書籍
《取り組み》
2)RUN伴
認知症の人と一緒に、誰もが暮らしやすい地域を創る
タスキをつなぐという「非日常な」体験・出会い・気づきから、認知症の人と一緒に誰もが暮らしやすい地域づくりを提案し、それぞれの「日常」が変わっていくことを目指しています。
【ひとことコメント】
「認知症」というものを"未知のもの"と思うとなかなか近づけない。
自然と生活の中に”ある”と知ってほしい、触れてほしいという想いで毎年タスキをつないで日本中を走り抜けるイベント
3)なかまぁる
認知症と診断されたその後も、日々の暮らしは続きます
認知症とともに生きる人たちが、仲間と一緒に自分らしい暮らしを続けていくための情報サイト
【ひとことコメント】
朝日新聞社の「認知症」をもっと知ってほしい、暮らしやすいように情報発信やイベントの企画を行っているサイト。
□「認知症」を疑似体験する
1)認知症VR:認知症フレンドリー講座(朝日新聞社)
【ひとことコメント】
認知症特化型メディア・なかまぁるを運営する朝日新聞社が企画・運営。
2)VR認知症:VR Angel Shift(シルバーウッド)
【ひとことコメント】
認知症をVRで体験するという走りとなったサービス。介護施設(銀木犀:サービス付き高齢者住宅など)を運営するシルバーウッドが企画・運営。
3)認知症疑似体験VR:認知症疑似体験VRセミナー(日本高齢者アタッチメント協会)
【ひとことコメント】
日本高齢者アタッチメント協会の代表でもある認知症介護歴30年以上の看護師が企画・運営。
新しいカタチの介護研修
~仕事と介護の両立支援研修 けあとの遭遇®ワークショップ~














