介護のために長年勤めていた会社を辞めざるを得ない「介護離職」は、誰にでも起こり得る問題です。もちろん、仕事をしながら介護をしている方もたくさんいらっしゃるため、仕事と介護の両立は不可能ではありません。しかし、精神的負担や身体的負担が大きいことを考えると、安易にできることではないといえるでしょう。
では、仕事と介護を両立させるためにはどうしたらいいのでしょうか?
こちらでは、仕事と介護を両立させるために知っておきたいことをご紹介いたします。ご家族の介護が必要になったときに備えて覚えておくと便利な制度についても解説いたしますので、ぜひご参考ください。
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介護と仕事を両立させるために知っておきたいこと
介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が社会問題となっていますが、2017年7月に発表された厚生労働省の「就業構造基本調査」によると、仕事をしながら介護をしている方は、約350万人と報告されています。つまり、働いている方の約5%(20人に1人)の方が働きながら介護をしていることになるのです。
仕事をしながら介護を両立されていらっしゃる方は一定数いらっしゃるのは確かではありますが、負担は決して軽いものではありません。たとえば、一般的に要介護度が高くなれば、それだけ介護にかかる時間も増える傾向にありますので、両立も難しくなってくる傾向があります。
介護をするためにもお金はかかるため、収入を維持するために仕事と介護の両立の必要性は高まっているものの、介護の時間確保のために転職した多くの方が収入の減少を受け入れざるを得ない状況にあることは確かです。
これまでの生活スタイルを全く変えずに仕事と介護を両立するのはほぼ不可能であるといえるでしょう。
しかし、近年は介護離職問題が社会問題として認識され始めたことで、国が中心となって「介護離職ゼロ」を目標とした各種支援制度が進められています。
たとえば、平成29年1月には改正育児・介護休業法が施行され、対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで、「介護休業」を分割取得することができるようになりました。「介護休業」は、いわゆる介護をするための休業ではなく、「介護の体制」を整えるための期間としての活用が望ましく、分割取得することができるようになったことでこれを後押しできるようになりました。
また、介護離職防止のために社員向けの研修を行う企業も増えてきています。これまではあまり認知されていなかった、仕事と介護の両立のための制度などを周知する研修等を行うことが、介護離職防止につながるのです。そして、制度を整えたうえで、職場でその制度の利用をしやすいように家族の介護に関する相談を打ち明けやすい環境を整えておくことも大切です。
企業が用意している制度を利用するほか、各自治体に設置されている「地域包括支援センター」という介護まわりの相談ができる行政の窓口を活用することや、介護休業中の収入を確保するための介護休業給付金といった制度も活用できますので、様々な制度をうまく活用しながら、仕事と介護の両立を実現できるようにしていきましょう。
介護離職防止のために理解しておきたい育児・介護休業法
介護離職防止のためにも、企業は以下の制度についてよく理解しておき、社員が活用できるようにすることが大切です。国が公布している「育児・介護休業法」では、介護休業と介護休暇が定められています。
介護休業
要介護状態の家族につき、通算して93日の休業申請が可能です。一度状態がよくなった家族が再び介護が必要になった場合でも、93日を分割して3回まで休むことができます。
同一の事業主に1年以上雇用されていること、介護休業を取得してから93日後から6ヶ月後の間に契約が満了にならない方が対象となります。
介護休暇
要介護状態の家族につき年間5日まで休暇を取得できる制度です。対象家族が2人以上の場合は10日まで取得が可能です。半日単位で取得が可能でしたが、法改正により令和3年1月1日からは時間単位での取得が可能になりました。
また、改正前は1日の勤務時間が4時間以内の方は取得できませんでしたが、すべての労働者が取得可能になっています。
また、「育児・介護休業法」では休業・休暇の取得のほかにも介護を行う社員が働きやすくするために、様々な支援措置を講ずることが企業側に定められています。
「時間外労働の制限」により1ヶ月24時間、1年で150時間を超えて労働時間を延長してはならないことや、午後10時から午前5時までの深夜に労働させてはならない「深夜労働の制限」、就業場所変更により介護が困難になる社員への配慮などがあります。
これらの制度について社員にしっかりと理解してもらうことが、相談しやすい職場環境づくり、さらには介護離職防止へとつながっていきます。
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