「認知症」という言葉はニュースなどでもよく取り上げられるようになりましたので、ご存じの方は多いのではないでしょうか。

でも、「認知症」がどんなものなのかをご存じの方は意外と少ないかもしれません。

いわゆる認知症のイメージとして、

 ●何もわからなくなってしまう
 ●認知症になってしまったらもうおしまい
 ●コミュニケーションがとれなくなってしまう

というイメージを持っている人が多いかもしれません。

少し前までは、「認知症」「痴呆症」と呼ばれていました。

 痴:頭の働きがにぶい。思慮分別が足りない。ぬけている。おろか。
 呆:愚か。ばか。

漢字の意味からすると侮蔑的な意味合いだ、ということで2005年に用語が変更されたという経緯がありました。

 「痴呆」という侮蔑的な言葉のために、隠してしまったりすることで早期発見の妨げになっているのではないか、という提案から用語の変更につながりました。

 しかし、いま「認知症」という言葉であったとしてもネガティブなイメージが強いと言わざるを得ないのではないでしょうか?

 そのネガティブイメージのために、「認知症」というものを遠ざけてしまったり、忌避してしまうことで、より一層「認知症」に対するイメージが悪くなるばかりか、「認知症」となって一番不安を抱えているご本人がなおさら追い込まれてしまうという環境に拍車をかけてしまう状況になってしまう。

 「認知症」というものは誰もが通る道、と言われているものでもありますので、

「認知症」ってこういう病気なんだ

 とまずは知っていただくことが大切なのではないかと思い、この記事を書かせていただきました。

 できるだけわかりやすくお伝えするために、要点を絞って解説をさせていただいておりますので、最後までお読みいただければ幸いです。

目 次

1)認知症ってどんな病気? | まずは基礎知識を知ろう
2)認知症の方はどのくらいいるの? | 意外と身近かもしれません
3)認知症になったら治療することはできるの? | 薬がすべてではありません
4)認知症は予防することはできるの? | 早期発見が一番かもしれません
5)まとめ

+α)参考情報(おすすめの書籍や参考サイトなど)


1)認知症ってどんな病気? | まずは基礎知識を知ろう

1-1)認知症は病気ではない?

  まず、最初にお伝えしたいものとして「認知症」という《病気》は無いということです。

  あくまでも様々な症状をひとくくりにして「認知症」という名称をつけているものであり、その原因や症状、対応等が多種多様であり、「認知症」というひとくくりで《その人》を見てしまうと大切なものを見落としてしまう恐れがあるということを強く伝えたいのです。

  症状をひとくくりに、、、と言ってもイメージがわきにくいと思いますので、比較的身近な「花粉症」で例えてみますと、

   原因:スギ、ヒノキ、ブタクサ等々60種類以上の花粉など
   症状:目のかゆみ、鼻水、充血、涙が出る、倦怠感など

  原因となる花粉の種類が複数の方もいれば、症状が複数の方もいらっしゃる。

  「認知症」も同じだといわれています。

1-2)認知症の症状

  認知症は、なんらかの原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなってしまったりすることにより様々な障害が起こり、生活するうえで支障が出てくる状態のことを言います。

  一言で言えば、「脳がうまく機能しなくなってしまった状態」の事ということになります。

  認知症の症状としては、大きく分けて中核症状と周辺症状(BPSD)と言われる2つの種類があります。

  中核症状:脳の細胞が壊れることで《直接的》に起こる症状のこと
       主に、記憶障害や見当識障害、理解・判断能力の低下等が挙げられます

  周辺症状:本人の性格や環境、人間関係などが相まって中核症状に加えて
       《間接的》に起こる症状のこと
       主に、不安や焦燥、うつ状態、暴言・暴力等が挙げられます

   ※わかりにくい症状の用語の主なものについては本章の末尾にまとめさせていただいております

  脳細胞の状態によって直接起こる「中核症状」本人の状態や環境によって間接的に起こる「周辺症状」の二つがあると思っていただければ十分です。

  介護する方にとってストレスが強い、苦労されている症状として主に挙げられるのは後者の周辺症状であるといわれています。

  たとえば、暴力行為

  ご本人の記憶の機能(中核症状:記憶障害)が弱ってしまい、何かを忘れた(本人は本当に覚えていない)ことについて、まわりの方から強く責められてしまった時などに思わずカッとなってしまい暴力行為を働いてしまう。

  そういった症状は、確かに認知症の症状である「記憶障害」に起因しているかもしれませんが、まわりの理解が無かったり、ご本人がやってもいないことを責められたことに対して強く反発する性格だったりすると、思わず手が出てしまう、というような症状(周辺症状:暴力行為)が出てきてしまうということがあるといわれています。

  <中核症状>
   □記憶障害
    物事を覚えられなくなったり、思い出せなくなったりする
   □見当識障害
    時間や場所、やがて人と の関係が分からなくなる
   □理解・判断力の障害
    考えるスピードが遅くなったり、家電やATM などが使えなったりする
   □実行機能障害
    計画や段取りをたてて行動できない

  <周辺症状>
   ●心理症状
    □抑うつ
     気分が落ち込み、無気力 になる
    □せん妄
     落ち着きなく家の中をうろうろ する、独り言をつぶやくなど
    □人格変化
     穏やかだった人が短 気になるなどの性格 変化
    □幻覚
     見えないものが見える、 聞こえないものが聞こえるなど
    □妄想
     物を盗まれたなど事実で ないことを思い込む

   ●行動症状
    □徘徊
     歩き回って、帰り道がわからなくなるなど
    □暴力行為
     自分の気持ちをうまく伝えられないなど、
     感情をコントロールできないため暴力をふるう
    □不潔行為
     風呂に入らない、排泄物をもてあそぶなど

1-3)認知症の種類

   認知症には、「4大認知症」と言われる種類があります。

出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」

   ●アルツハイマー型認知症(68%)
    【原因】脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、
        脳に萎縮がおこります。
    【症状】昔のことはよく覚えていますが、最近のことは忘れてしまいます。
        軽度の物忘れから徐々に進行し、
        やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。

   ●脳血管性認知症(20%)
    【原因】脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、
        脳細胞が死んでしまう病気です。
        高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。
    【症状】脳血管障害が起こるたびに段階的に進行します。
        また障害を受けた部位によって症状が異なります。

   ●レビー小体型認知症(4%)
    【原因】脳内にたまったレビ-小体という特殊なたんぱく質により
        脳の神経細胞が破壊されおこる病気です。
    【症状】現実にはないものが見える幻視や、
        手足が震えたり筋肉が固くなったりするといった症状が現れます。
        歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。

   ●前頭側頭型認知症(1%)
    【原因】脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気です。
    【症状】感情の抑制がきかなくなったり、
        社会のルールを守れなくなったりするといったことが起こります。

   ●その他(8%)
    上記からもお分かりいただけるように、割合としては7割近くが「アルツハイマー型認知症」と言われており、二番目の「脳血管性認知症」を合わせると9割近くになります。

   それぞれの認知症の”型”によって特徴がありますが、あくまでも目安としてご覧いただくようにしていただき、

《その方の感情》と《症状》に向き合っていただくことがよい人間関係を維持していくコツになるのと言われています。

   なお、認知症の原因は複数のものが重なることもありますので、病名は一つの手がかりではありますが、それだけとは限らない複合型もあるということも一応知っておいていただければ幸いです。

2)認知症の方はどのくらいいるの? | 意外と身近かもしれません

  2012年に462万人、そこから2025年問題とも言われる、団塊の世代が75歳以上となる2025年には700万人を超えて65歳以上の高齢者5人に1人は認知症に、2050年には900万人を超えて4人に1人は認知症になるといわれています。

  数字をご覧いただければ感じていただけるように、決して珍しい病気ではなく、むしろ身近な存在であり、高齢者となればほぼ誰もが通る道となっていくととらえていただいてよいのではないでしょうか。

3)認知症になったら治療することはできるの? | 薬がすべてではありません

  一言で言えば治療できる場合とできない場合がある、ということになります。

  治療薬は発売されているものの、認知症はまだまだメカニズムが解明されていない点が多く、症状を一時的に抑えたり、症状の進行を遅らせたりする治療が主なものとなります。

  薬による治療ももちろん効果は期待できる点はありますが、認知症となって精神的に不安になっていらっしゃるのはご本人です。

  ご本人の不安を少しでも取り除いてあげられるようにすること、これこそが認知症の進行を遅らせたり、やっかいな周辺症状があらわれるのを抑えることができるのではないか、とも言われていますので、気持ちの余裕をいかに持っていられるように自分自身をコントロールしていけるかというのが大事かもしれませんね。

4)認知症は予防することはできるの? | 早期発見が一番かもしれません

  先ほどお伝えしたように、認知症はまだまだメカニズムが解明されていない点がおおい病気のひとつです。

  どれだけ気を付けていてもなってしまう時にはなってしまうものです。

  そういう意味でも、日々健康に生活していける時間をいかに長くつくることができるか、という視点で身体や脳のケアをしてあげることが一番の予防になるのではないでしょうか。

  ご参考までに、認知症予防も含めて健康を保つための秘訣としてよく言われている3つのポイントをご紹介させていただきます。

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  1.生活習慣(食生活や運動)
  2.生きがいを見つける
  3.コミュニケーションをとる
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1.生活習慣(食生活や運動)

  いわゆる生活習慣病によって引き起こされる認知症(脳血管性認知症など)もありますので、バランスの良い食事や適度な運動は大切だといわれています。

  現在はコロナウィルスの流行に伴い、自粛となったことで《歩く》機会が大幅に減ってしまった方もいらっしゃるかと思います。

  《歩く》という運動も意外と侮れない、むしろとても大切な運動の機会にもなるのです。

  こちらの表は《歩く》ことによって予防・改善できる可能性がある病気等の表です。

出典:健康長寿ネット

  オレンジ色の文字は認知症を含む高齢者の方に多い病気
  緑色の文字は年齢に関係なく起こり得る病気となっております。

2.生きがいを見つける

   高齢者の方が元氣に過ごすためには、「きょういく」と「きょうよう」が大切と言われています。

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きょういく:今日行くところがある
きょうよう:今日用事がある   
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   初めてこの表現を聞いたときにはウマイことを仰るなぁと思いました。

   実際、何か予定があることで生活にメリハリが生まれますので、新たな刺激となることが脳に好影響を与えるといわれています。

   こちらのコラムでも書かせていただきましたが、

生きがいとは「自分がしたいことと義務が一致すること」と定義をさせていただきました。

  《自分がしたいこと》

   それを見つけるために、「やりたいことリスト」というものを作ってみるということもよいのではないかと思っております。

   そして、それを親だけでなく親子で一緒に作ったり、リストを見て「これ一緒にやろう!」なんていうコミュニケーションが生まれると親孝行の時間にもなったりもするのではないか、とも思ったりもいたします。

3.コミュニケーションをとる

  最後のコミュニケーションは、他の方とお話をされたりすることです。

  「話をする」

  これが最も脳を活性化する効果があるとも言われています。

  ひとり暮らしをしていますと気が付いたら1日一言も誰とも話していない、なんてことがあったりもします。

  そんな日が続くと知らず知らずのうちに脳が衰えてしまうかもしれませんので、少しでも人と話す、コミュニケーションをとるという機会をつくることをおススメいたします。

5)まとめ

  いかがでしたでしょうか?

  認知症と一口に言っても縁遠いものでもなんでもなく、むしろ生活に身近なものであると感じていただけたのではないでしょうか?

  さらには、私たち自身も認知症になる可能性が思ったよりも高く、ならばなったときにも生活しやすい環境をいまから作っていくことができたら、その時が来た時にも生きやすくなるのではないでしょうか?

  さいごにひとつだけお伝えして締めくくりとさせていただきます。

「認知症」はその人の《全部》ではなく、
あくまでも《一部》に過ぎません。

  しかし、「病名」がついた時点で、無意識にいわばレッテルを貼ってしまうことがあります

  《病名》が先、ではなく《その人自身》が先。

  そのように接していただけることが「生きやすい社会創り」につながっていくのではないでしょうか?

  このコラムが少しでもお役に立てたならば嬉しい限りです。

<参考情報>

認知症
(厚生労働省)

認知症施策の総合的な推進について
(厚生労働省)

<認知症関連のおすすめ書籍・活動>

□当事者の声(ご本人)

 1)『ボクはやっと認知症のことが分かった』 著:長谷川 和夫

【ひとことコメント】

認知症の専門医である長谷川和夫氏がご自身が認知症となった体験を綴った書籍

認知症検査としてよく利用される「長谷川式認知症スケール」の生みの親の一人でもある長谷川氏本人が当事者となった体験を伝える

 2)『丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-』 著:丹野智文

【ひとことコメント】

 自動車のトップセールスマンであった丹野氏がある日突然若年性アルツハイマー型認知症と診断されたのは39歳の時
 その当時の体調の変化の様子やその後診断に至った経緯、職場での対応などリアルな声を聞くことができる書籍

 3)『私は誰になっていくの?~アルツハイマー病者から見た世界~』
     著:クリスティーン・ボーデン

   『私は私になっていく ~認知症とダンスを~』
     著:クリスティーン・ブライデン

 【ひとことコメント】
  オーストラリアの首相として激務の最中、46歳という若さでアルツハイマー型認知症と診断され、要職を退く。
  その体験を認知症本人が書籍にしたのはこれが世界的にも走りの頃で大きな話題になった書籍

□当事者の声(ご家族)

 1)『母が若年性アルツハイマーになりました。
     〜まんがで読む 家族のこころと介護の記録〜』 著:Nicco

【ひとことコメント】

 50代で若年性アルツハイマー型認知症を発症された母親を父親とともに介護をしていく中での心の葛藤をまんが形式でわかりやすく伝えている書籍

 2)『認知症の人がその人らしく生きる介護術』 著:速水 ユウ

【ひとことコメント】

 医療・介護のプロであっても、家族の介護となるとアタマでわかっていてもココロがついていかない
 そんな体験を小説形式でわかりやすく伝えている書籍

□生きやすい社会創り

 1)『注文を間違える料理店』 著:小国 史朗

【ひとことコメント】

 認知症を抱えているけれども、まちがえちゃうこともあるけれども何もできないわけじゃない。
 まちがえることを受け入れて、まちがえることを一緒に楽しんでしまえるレストランというコンセプトでチャレンジをされた経緯を描いた書籍

  《取り組み》

 2)RUN伴

   認知症の人と一緒に、誰もが暮らしやすい地域を創る

 タスキをつなぐという「非日常な」体験・出会い・気づきから、認知症の人と一緒に誰もが暮らしやすい地域づくりを提案し、それぞれの「日常」が変わっていくことを目指しています。

【ひとことコメント】

 「認知症」というものを“未知のもの”と思うとなかなか近づけない。
 自然と生活の中に”ある”と知ってほしい、触れてほしいという想いで毎年タスキをつないで日本中を走り抜けるイベント

 3)なかまぁる

認知症と診断されたその後も、日々の暮らしは続きます

 認知症とともに生きる人たちが、仲間と一緒に自分らしい暮らしを続けていくための情報サイト

【ひとことコメント】

 朝日新聞社の「認知症」をもっと知ってほしい、暮らしやすいように情報発信やイベントの企画を行っているサイト。

□「認知症」を疑似体験する

 1)認知症VR:認知症フレンドリー講座(朝日新聞社)

【ひとことコメント】

 認知症特化型メディア・なかまぁるを運営する朝日新聞社が企画・運営。

 2)VR認知症:VR Angel Shift(シルバーウッド)

【ひとことコメント】

 認知症をVRで体験するという走りとなったサービス。介護施設(銀木犀:サービス付き高齢者住宅など)を運営するシルバーウッドが企画・運営

 3)認知症疑似体験VR:認知症疑似体験VRセミナー(日本高齢者アタッチメント協会)

https://ninchishoucare.jp/ninchishouvrtraining/

【ひとことコメント】

 日本高齢者アタッチメント協会の代表でもある認知症介護歴30年以上の看護師が企画・運営。


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